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2020年10月31日 (土)

ESL-63復活と改造プロジェクト(5)

5.プロジェクト概要

ここまで以前の修理、改造について書いてきましたが、このあたりで今回のプロジェクトについて少し書こうと思います。すでに書いた事以外にも改造したところもあるんですけど、それは後で書くとして、ちょっと目先を変えて。


その後も改造を重ねて「とってもいい音」が出るようになったんですが、数年で放電が始まってしまいました。ピアニッシモで耳を澄ませば放電音が混ざっているのが判る事がある状態から次第に悪化し、ついには聞くに堪えない状態になってしまいました。で、ESLはお休み。部屋の隅で粗大ゴミ状態のESLが眠っていました。捨てなかったのは「そのうち復活させる」つもりだったからです。
そういう訳で今回の復活プロジェクトとなったわけです。修理には分解が必用だし、どうせ分解して修理をするのならば、気に入らない点を全部改造してしまえ。で、「復活と改造」になったのです。


まずは修理。完全に分解して振動膜を張り替える。ネットで検索するとオーストラリアの店(イギリスではない!?)が修理キットを売っているのが分かりました。振動膜用フィルムと接着剤などなどのキットのようです。詳細は調べていませんが「必用な物一式」との事です。それがあるならば修理可能に思えるのでプロジェクトをスタートしました。・・・修理キット、まだ発注してない・・・


手順は天板、化粧ネット、防塵フィルムを外す。ここまでは簡単。次に、追加した接着剤やデッドニング材を剥がす。固定電極のプリント基板と、それを支えるプラスチック枠を傷つけないように・・・2台で1ヵ月くらいかかりました。(1日中やっているわけではないし、お休みの日もあるんで)(デッドニングについては今回書くつもりだったのですが・・・近いうちに書きます。)ここまでは難しくはありません。

次に分解してエレメントを外す。恐る恐るネジを外したりしながら1台を分解しました。予想していなかった構造だったりして、かなりの時間を使いました。オリジナルの筐体は使わないつもりなので、エレメントが破損しないように【だけ】に注意しました。あっ、高圧電源や音声信号の昇圧トランスもオリジナルを使う予定なので、これも壊さないように。


次は清掃。<----- 今ここ

固定電極は薄いプリント基板で、音が出るための穴が開けてあります。直系約 1.5mm の穴が基板1枚あたり約 12,000 個あります。1台あたりエレメントが4つ。エレメント1つに固定電極が2枚。2台で16枚の基板が使われています。問題なのは、その穴の中に古い接着剤のカスとか空気中の油分と埃の混合物とかが付着している事です。どうやってこれを掃除するか。油分と埃の混合物は大したことはないようですが、古い接着剤のカスを取るのが大変。すぐに思いつくのは「リーマー」なんですが、穴径が良く分からないし、インチサイズの可能性もある。リーマー自体は 0.1mm 単位であるんですけど、どれを買えば良いのか分からない。その上、安くない。(1本ン千円)(注:穴を大きくするための「テーパーリーマー」ではなく、穴の内側を仕上げる「リーマー」です。念のため。)色々試した結果、メガネ用のマイナスドライバで「クリクリ」やる方法に落ち着きました。それにしても、固定電極は1台あたり8枚。全部で16枚。始めてみると、1枚あたり1週間強。ならば全部で4~5ヵ月かな。最初のエレメントの2枚と、2つ目のエレメントの前面の基板はその程度で出来たんですけど、後面の基板が大変。後面の基板の振動膜側には布が貼ってあるんです。多分「これを貼ると高音が・・・」とか、いわゆる「音作り」の結果だと思うんですけど、こういう「あいまいな物」で音作りなどすべきではない。と思うので、この布は剥がして捨てる・・・剥がさないと穴の内側のクリーニングが出来ないし。ところが、2つ目の後面に使われていた接着剤が1つ目とは異なる上、分厚く塗られていました。更に振動膜側には塗料と思えるものがベッタリ。かなり分厚く塗られていました。この塗料、一部はひび割れていて、少しつつくとポロポロ落ちる部分もありました。こんな物が固定電極と振動膜の間に落ちると面白くないので、これも剥がす事にしたんですけど、これが大変。ポロポロ落ちる部分は簡単なんですけど、場所によっては強固にくっついている。削り落とすしかなさそう。サンドペーパーやスチールウールでは強力すぎて基板にダメージがありそうです。色々やってみた結果、スポンジたわしで削り取るのが良さそう。あまり強力ではないので、一気に削り取るというわけにはいきません。長い時間がかかります。その上、この接着剤や塗料、当たり前だけど穴の内側にも付着しています。眼鏡用ドライバで「クリクリ」とやっても、一気に落とすというわけにはいきません。という訳で長い時間がかかります。この1枚とは、もう2ヵ月も格闘していますが、まだ終わらない。まぁ、納期があるわけではないし、時間がかかるのは構わないけど、いつ出来るんだろう。残りの12枚にこんなのがない事を祈るばかりです。


改造(予定)

修理していて気になったのは、とにかく作りが華奢な事です。特にエレメント(発音ユニット)に外力がかかってしまう構造なのが気になります。取扱説明書には移動させる時にどこを持つべきか、なんて事が書いてあったような記憶があります。ひょっとしたらオーディオショップで聞いただけかも知れませんが。標準品(パンチングメタルの保護パネルがある状態)でも「持ち方注意」なんです。保護パネルは構造材でもあったんです。それを外しているので、大変。いずれにしても、ヘタな所を持って移動させたりしたら、エレメントに力がかかってしまいます。
そこで、強固なフレームを作って、それにエレメントを固定しようと思っています。フレームは絶縁物なのが望ましいので、アクリルの厚板を使う予定です。幸いアクリル板を加工して販売してくれる業者があります。最初は 30t くらいの厚板にエレメント部分の角穴を空けて・・・と思っていたのですが、10t くらいの板状のものを重ねてボルトで止める事にしようか、と思っています。理由はフレームが振動した時、アクリル同士が異なる動きをして、接する面の摩擦によって振動エネルギーをロスらせる事ができるのだは? と思ったからです。それに、薄い(と言っても 10t くらいですが)板を重ねた方が作りやすい。「部分的にカットして」が、「その部分の枚数を減らして」で済みそうだからです。
アクリルのフレームは木で作った外筐に「ゆるく」固定するつもり。外筐を持って扱ってもアクリルフレームにかかる力を最小限にしたい。高圧電源や音声信号の昇圧はオリジナルのまま。保護回路(過大入力があった時スピーカーを保護する回路)は全部撤去。保護回路にはサイリスタやツェナーダイオードが使われているのですが、音声信号の部分にそんな物が入るのは面白くない。サイリスタはOff状態だし、ツェナーダイオードは降伏電圧以下なんで影響はないんだろうけど、気持ちが良くない。過大入力を加えなければいいので、撤去。


早ければ来年の春ごろ完成のつもりだったけど、基板のクリーニングに手こずっているので、大幅に遅れそう。一体いつできるんだろう。・・・遅れても完成すればいいか。途中で失敗して本当の粗大ゴミになる可能性もあるんだし・・・でもなぁ。完成しないと聞けないんですよね・・・。などと言いながら、ここ数日は疲れを感じたので、それにDBの第2版に面白そうなアイデアを思いついたので、修理はお休み。

この後(清掃完了後)の予定は

採寸、フレーム設計、部材発注、組み立て。

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