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2020年11月 3日 (火)

ESL-63復活と改造プロジェクト(6)

6.デッドニング


この記事「ESL-63復活と改造プロジェクト」には「分解しました」「・・を外しました」などという記述がたくさん出てきますが、これは「私はこんな事をしました」という事を書いただけです。それが適切かどうかは分かりませんし、同じような事をなさって被害が発生しても、私としては何もできません。結果として、あなたの ESL-63 が粗大ゴミになっても責任は負いかねます。同じような事をなさるとしても、あくまでも【自己責任】でお願いします。

とりあえず、まともな音になったので、その状態で聞いていたのですが、どうも高域に「ひゃらひゃらした」固有音があるように思えてきました。せっかく貼った防塵フィルムを剥がして固定電極を固定しているプラスチックを弾くように触ると、かなり高い音の共振音が聞こえます。2~3kHzあたりか?バイオリンのE線(1弦)の開放弦あたりかなぁ・・・昔、楽器屋で「バイオリンのE線下さい」と言ったら、店員がA線を出したのを思い出したりして・・・プラスシック枠と固定電極を接着している時に気づくべきだったのですが・・・


こういう共振音が混ざると、音が濁ってしまうんです。共振周波数と等しい音が音源にあるならば、その音が強く響くだけなんですけど、音源の周波数の近くに共振があると、音源の音の振動で刺激されて共振が始まってしまい、共振音が出てしまいます。この共振音、アンプなどの歪などとは全く異なり、元の楽音とは全く関係のない音なんです。これが元の楽音と干渉すると、ひどい音になってしまいます。このような共振音がスピーカーのキャラクター、個性になっていたりして、そのようなキャラクターを好む人がいるのも確かです。でも、私の好みではありません。


どんな音かと言うと・・・アマチュアの、アマチュアとしてもレベルが低いオーケストラには正しい音程を出せない初心者が混ざっていたりします。すると「ヘタな楽団特有の」音になってしまいます。少数の初心者が出す音がオケ全体の音を台無しにしてしまっているんです。まぁ、アマチュアのオーケストラの場合は「おぉ、頑張って一生懸命演奏しているね(^o^)」でいいんですけど、ウチのスピーカーはそうはいきません。


共振をなくすには、共振する物を取り外すのが一番いいと思うんですけど、このプラスチック枠を取り外すわけにはいかない。なんたってエレメントの主要部分なんだから。そこで、プラスチック枠のデッドニングをする事にしました。デッドニングというのは、共振の強さ「Q」(Quality factor)を小さくする事です。振動した時、その振動のエネルギーを熱に変換して消費させる。結果として振動が小さくなる、という方法です。
すぐ思いつくのはブチルゴムですが、それだと剥がすのが大変です。その当時すでに「ESL63は、とっても華奢。いずれ大改造してエレメントは頑丈なフレームに固定したいなぁ」と思っていたので、簡単には剥がせないブチルゴムはやめ。結局油粘土を使う事にしました。プラスチック枠は格子状になっていて、枠1つあたり80個の枠があります。枠は長方形なので、320個の面があります。これに油粘土を付けていきました。プラスチック枠には固定電極が固定されていて、そこには高電圧(昇圧された音声信号)がかかります。固定電極の近くには油粘土を付けないように気を付けて・・・かなり時間がかかりました・・・
出来上がって聞いてみて驚きました。何に驚いたかというと・・・高音域の独特の響きがなくなったのに気づく前に、低音が圧倒的に改善されていたからです。振動膜~固定電極間の静電気力で振動膜が駆動されるわけで、ならば同じ力で固定電極も駆動されるわけで・・・油粘土で重くなった分だけ固定電極が動かなくなり、それだけ振動膜が正確に動くようになった、という事のようです。もちろん、高音域のクセはなくなりました。
ところで、この高音域のクセ、ESL63の高音域の「華」でもあったわけで・・・

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